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俺たちのミッレミリアPART6

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すでに途方もなく途方にくれているわけである。しかも、中年男が重い荷物を引っ張ってのターミナル間移動ほど、人を寂しくさせるものはない。あえて話すべき会話のタネも見当たらない。
ただでさえ、人を早くどこかへ消し飛ばしたい飛行場の雰囲気に、夜のとばりが拍車をかけている。このまま残ってしまうと、とんでもない自体に巻き込まれるかもしれぬという、漠とした不安が、周りの人々をも包み込み始めているようだ。もちろん、私の心にも。
諦めきった民族衣装の集団が、無機質なチェアーの間に折り重なるように、眠りこけている。残りわずかな今日という時間のすべてを諦めた人間の存在が、かえって我々の心にさざ波をたてた。
エアフランスの、明日朝一番のパリ行きに乗れたとしても、パリーセビーリャは午後一番でしかない。そもそも試乗会は朝一番から。詳細は判明していないが3モデル+αのメニューが予定されていたから、確実に1ないしは2モデルを乗り損ねる可能性が大きい。「最悪、1台しか乗れないかもねえ」。ようやく会話の糸口を見つけた私は、そうY編集長にかたりかけた。内心、“みんながまだいるゴートへ帰りたいな”という想いもあったが、有名雑誌を預かる長とのんきで飲んべえなフリーランスライターとでは、同じ試乗1つでも重さが違う。ギブアップ&キャンセルという気持ちをあえて抑え込み、深く考えもせず、もう1つのアイデアを投げかけてみた。
「どうせやったら、レンタカーにしません?飛行機じゃ、朝に間に合わないのは確実やけど、クルマやったら可能性はあるわけだし」。私のそんな提案に、Y編集長は一瞬だけ目を丸くしたものの、あっさり「そうしようか」とノってくれた。
善は急げ、である。おあつらえ向きに、レンタカー会社は、マルセイユ空港の建物を出た目の前の駐車場にいくつもあった。きびすを返して建物を出た我々は、絶望の淵で蜘蛛の糸を掴んだほどには安堵せず、しかし少なからず意気揚々と少しだけ広くなった歩幅で、レンタカー会社の看板を目指し、道路を渡った。

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