アストンマーティンを語るうえで欠かせないのが、デイビッド・ブラウンです。アストンマーティンのモデル名に付く「DB」は、そもそもデイビッド・ブラウンが導入したものでデイビッドの「D」、ブラウンの「B」と頭文字をとったものです。
元々、アストンマーチンは1913年に「バムフォード・アンド・マーチン」として産声を上げました。そして1915年に製作された1号車が、イギリスのバッキンガムシャーの村「アストン・クリントン (Aston Clinton) 」で開催されたヒルクライムレースで成功を収めたことから、「アストンマーチン」のブランド名が誕生したんです。
その後、幾度と倒産し、やがてデイビッド・ブラウンがアストンマーチン社を買収します。しかも、買収のきっかけが“高級スポーツカーメーカー売りたし”という新聞広告だったとは、何回聞いても驚けます。そして、3万ポンドが提示されていたなか、デイビッド・ブラウンがオファーしたのは2万500ポンド。
後に、倒産したラゴンダ社も破産管財人から買収(建物以外全て)したのもデイビッド・ブラウンでした。目をつけたのはW.O.ベントレーが設計したラゴンダ社に帰属するエンジンでした。25万ポンドが提示されていたなか、無理を承知で5万2500ポンドをオファーし・・・、買えてしまったんです。
“買えたらラッキー”くらいの入札スタンスがとれるお金持ちって、こういう逸話が多いですよね。
もとい。
そんなデイビッド・ブラウンが自身の愛車として所有していた、DB5コンバーチブルが今、イギリスのニコラス・ミーという販売店にあります。新車時のオーダーシートにはバッチリ、デイビッド・ブラウンの文字が記載されています。
デイビッド・ブラウンが所有したのは3年で、複数のオーナーの手元を渡り歩いたのち、直近のオーナー(アストンマーチン・オーナーズクラブの元役員)が実に28年間保有していたんです。つまり、久しぶりに中古車市場にお目見えした、ということです。
走行距離9万マイルですが、写真を見る限り新車のような状態が保たれています。しかも、この手のクラシックカーとしては珍しい「12か月間保証付き」ですって。まぁ、115万ポンドもするから、万が一の修理代も販売店側は確保していますよね(笑)。
YouTubeで気になったのは「この車両の購入者を探しています」ではなく、「この車両の次の管理人を探しています」でした。歴史あるクルマはもはや買うのではなく、管理させて頂くってことですね。
いやぁ、それにしても美しい。ヨーロッパに拠点を構え、クラシックカー界隈で顔を売りたい、コネを作りたい、という人にはうってつけでしょうね。サクッと、コミュニティに入れることでしょう。
そういう意味では、ハイソサエティへのチケット、と解釈できなくもありません。
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