人気モデルのフルモデルチェンジである。見た目にはキープコンセプトの部類に入るだろうが、VWは中身で真面目な勝負をかけてきた。ポイントは3つ。
1: およそ1割に相当するダイエットに成功
2: ハイブリッドモデルの設定やアイドリングストップなど燃費は約2割向上
3: 内外装の見栄え質感が大幅アップ
見た目には、顔つきを今風VW顔(ダ・シルバフェイス)としたため、遠くから見るとでっかいゴルフに見えるが、近寄ってみれば先代のイメージをよく引き継いだキープコンセプトデザインであることが判る。特にリアビューはトゥアレグそのもの(当然だが)。
ただし、より長く、より幅広く、そしてより低くなっているので、水平基調のグリルと相まって、とてもスポーティに見える。特に、サイドシルエットの肉感的な流れは、先代にはなかったエレガントさとスポーティさの融合が見て取れた。
さらに驚くのが、インテリアの質感向上だ。もはやアウディA6レベルである。アウディが一般化した高品質ソリューションをVWがついに使い始めたということだろうか。VWがこれをやってしまうとアウディはさらに上を目指さざるをえない。それもまた、楽しみ。
低くなったが、ヘッドルームに不満はない。実寸でも広がっているようだ。それよりも前席ならショルダースペース(幅増しが利いている)、後席ならレッグスペース(ホイールベース増が利いている)の、それぞれ拡大が嬉しい。見栄えともども、フルサイズの高級SUVとしてとても居心地のいい空間に仕上がった。
パワートレインは現在、4つ発表されている。日本に導入予定のない2つのディーゼルターボ(V6とV8)、そして日本仕様となるベーシックな3.6リッター直噴V6、これまでのガソリンV8に代わって待望のハイブリッドモデルの4タイプだ。ミッションは全てアイシン製8AT。V6系にはもれなくアイドリングストップ機能が備わる。
ハイブリッドについて補足しておくと、スーパーチャージャー付3リッター直噴TSIエンジンにモーターを組み合わせたもので、いわゆるパラレル方式。ただし、ATとエンジンとの間にデカップリングクラッチがあり、同じパラレル式のインサイトなどとは違って、発進から50km/hまでEV走行が可能である。電池はニッケル水素。もちろん回生ブレーキシステム付き。
フィレンツェ市内を、まずはハイブリッドで走ってみた。最近のVWらしく、非常にしなやかな乗り心地である。それに大型SUVならではの重厚感が加わって、VWではあるが高級なライドフィールだ。荒れた舗装面ではちょっとつっぱった感もあるが、許容できる範囲。特にEV走行中は、エンジンの存在がないため、ささいなことにもセンシブルになっている。ロードノイズなど、割り引いて考えた方がいいかも。
モーターアシストが加わったときのパフォーマンスはV8級である。それは間違いない。けれども、ホントはV6級の必要十分パフォーマンスを、たとえば4発と組み合わせて実現して欲しかった。V8狙いでくるというのは、高級路線の証。アウディやMベンツ、BMWなら判るが、VWはもう一歩、進んで欲しかった。それだけハイブリッドは手間もかかるし、金もかかるということ。そう思うとプリウスやインサイトは奇蹟的である。
ガソリンV6に乗り換える。ここ一発の瞬発力こそディーゼルはもちろんハイブリッドにもかなり遅れを取るが、それでもパフォーマンス的には必要十分だ。直噴ゆえ、低回転域でやや野暮ったいが、それ以外は8速あるATと相まって、ウルトラスムース。クルマの仕上がりの良さが光る。
驚いたのは、ディーゼルパフォーマンスだった。特に800NmのV8TDIは恐るべしのひとこと。身がぎゅっと凝縮して、弾丸のようにワインディングを駆け抜けた。ティグアンより軽快である。
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