ハイドラクティブサスペンションシステムは全車標準
シトロエンラインナップのミッドレンジを受け持つC5シリーズ。C5としては2世代目に当たる。シトロエン・プジョーPSAグループにおける最大の乗用車用FFプラットフォームを使った。つまり、プジョー407やシトロエンC6とは兄弟車ということになる。最大の魅力はスタイリングだろう。流行に決して左右されない、ユニークなカタチであることはシトロエンの伝統である。
C4やC6といった他の現行ラインナップと同様、存在感のあるスタイリングにまず惹かれるか惹かれないかが、購入に至る最初のステップとなるはず。最新シトロエンの流儀に則って、特徴的なダブルシェブロンのグリルデザインとした。フロントオーバーハングが非常に長いのが特徴だ。フロントからサイド、ルーフ、そしてリアエンドに至るシルエットは、サルーン・ステーションワゴンともに骨太でありながら流れるようなデザインで、ドイツ車っぽさ(グローバルに通用する、という意味で)を滲ませつつ、フランスの個性やイタリアの情熱も感じさせるもの。そういう意味では実にEUっぽいクルマかも知れない。
特にツアラーモデルのまとまりの良さは際立っている。リアにボリュームのある方がフロントオーバーハングの長さとバランスが取れていい。エステートモデルの美しさと実用性の高さもまた、シトロエンやプジョーの伝統なのだ。ちなみにBX以来のハッチバックサルーン方式(5ドアセダン)は今回からフツウの4ドアノッチバック式に改められている。実用重視のシトロエンファンにとっては残念なニュースかもしれない。
車内もなかなか見どころがある。複雑なデザイン、見栄え質感ともに最新の同クラス車と比べてみても見劣りするどころか勝っている部分も多い。ボディサイズがメルセデスのEクラス並になった割にはそれほど広さを感じないが、それでも左右幅を十分に感じさせるダッシュボードデザインとした。オーディオなどの操作系を配したセンターパッドを固定式とし、ステアリングホイールを、文字通りホイール(輪っか)の部分だけ回す方式などは、いかにもシトロエンらしい個性である。2l車には電動パワー式のハーフレザーシートが、3l車にはヒーター付電動レザーシートが装備された。
日本仕様として、2種類のボディタイプにそれぞれ3lV6には6ATと2l直4には4ATという2つのエンジン/ドライブトレーンを組み合わせた計4グレードが用意される。そして、もちろんシトロエンと言えば、のハイドラクティブサスペンションシステムを日本仕様は全てのモデルで標準とした。最新のIIIプラスとよばれるもので、通常のダンパー&スプリング方式の足回りとはまるで違う乗り味が魅力である。
セダンとツアラーとでは、それほど大きな走り味の違いはない。ツアラーモデルの方が、多少、空室の高速走行時にリアの長さを感じる程度。街乗りでもほとんど同じと考えていいが、ツアラーの方が若干、後方視界が良い。
ところが、3l車と2l車とでは、随分と乗った感じが異なっていた。V6モデルは鼻先が重い分、パワーステアリングは軽めの設定だが、走りそのものはパワー感も十分でかつどっしり&かっちりとしたライドフィールで、重厚感さえある。対して直4はしっとり重めのステアリングフィールだが、速度にノってからのクルマの動きは軽快そのもの。ただし、トルクの薄さからか、加速時のかったるさは否めず、4速ATということもあって変速質感もそれほど高くない。ツアラーに荷物を積むと、相当苦しい気がする。
エンジン仕様でテイストは異なるものの、心地よい硬さのタウンライドと高速走行時の安定性の高さは、最新のハイドラクティブサスの恩恵だと言えるだろう。C5には似合わないけれども、ワインディングにおける粘り腰も特筆もので、なかなか気持ちよく駆け抜けてくれる。独特のステアリング回しには、多少慣れが必要かも。慣れないうちは動かないセンターパッドに指や掌が引っかかるときがある。その他の操作性は基本的に悪くない。シートも、広さ、サポート、クッションともに優秀な部類で、レザーシートも今回は良くできている。