タイガーとイグアナを足したネーミング
ヨーロッパ市場では今、コンパクトSUVが人気だ。このカテゴリーを広めたのはホンダCR−VやトヨタRAV4といった日本車だったが、トヨタハリアー(レクサスRX)やランドローバーフリーランダーがプレミアム化の端緒を開き、今ではBMWやアウディ、M・ベンツといったドイツプレミアムブランドまでが積極的に参入している。そして、VWからも新しいコンパクトSUVが投入された。ティグアンだ。
車名の由来はタイガー+イグアナで、公募だという。パサート&ゴルフのボディをベースに独自のSUVシャシー(ダンパー&スプリング)を備えたトゥーランサイズのクロスオーバー車で、なるほどフロント回りにはパサートの、リア回りにはゴルフのイメージが透けて見える。機能性の高さと存在感あるスタイルが受け、欧州市場では発表3週間で4万台を受注。発売後7ヶ月連続でSUV販売台数ナンバー1となるなど、一躍ヒットモデルとなっている。
日本仕様は1機種のみ。2リッター直4の直噴ターボエンジンにティプトロニック付き6ATを組み合わせる。パワーは6気筒2.8リッター級。もちろんフルタイム4WDで、4駆システムは最新第4世代のハルデックス式だ。360万円という価格は、かなり戦略的。プレミアムブランドに比べればかなり割安で、このご時勢、沈んだ市場を刺激するのはこういった”新しいカタチの新しい価値”をもつ輸入車かも知れない。
“お買い得”な価格だが、装備は本格的だ。新採用のオーディオシステムを備え、エレクトロニックパーキングブレーキやリアビューカメラも装備される。OFFROADボタン1つで、ヒルディセントアシストやアクセルペダル特性変更、ギアモード、ABS制御などをオフロード走行にあった状態におき走行支援してくれるのも、今どきのSUVらしい。他のVWに比べて、随分と遊び心のあるコクピットデザインとした。丸形のエアコン吹き出し口が縦にふたつ並ぶ様子など、ユニークである。6:4分割可倒式リアシートはワゴン派に有効だ。通常時(5名乗車)でも470リッターの積載能力を誇るが、後席を倒せば最大1510リッターものスペースが出現する。これはミドルクラスワゴン並。
走り出してすぐに感じたのが、この手のクルマにしてはとても軽快な動きをみせたこと。ロールが少なく、背の高いクルマに乗っているという感じがない。それでいて視界は良好なわけだから、不満はなかろう。ワインディングも難なくこなす。スピードに乗ったときの乗り心地の良さは最近のVWに共通する魅力。これなら長距離ドライブでも不満なく使えそう。2名乗車で170psのエンジンは十分だった。DSGではないが、そのぶん加速に粘りがある。SUVにはダブルクラッチではなくトルコンATが似合う気がした。
唯一、気になったのは低速域でのフロント回りのふるえ。前にのみ軽量素材を使っているからか、もしくは高速走行時のスタビリティを重視したのか、いずれにせよ要改善ポイントだと思う。VWというブランドがもたらす安心感と、SUVカテゴリーというスペシャリティ感が見事に融合した1台。コストパフォーマンスもいい。日本でも人気を呼ぶに違いない。