走りながら環境対策につながる
「一般的にエンジン内部は、走れば走るほどカーボンが蓄積します。人間で例えるなら、血管につくコレステロールみたいなイメージでしょうか」と語ったのは、昭和シェル石油の中央研究所で燃料油(ガソリン、軽油、灯油)を研究している岡部伸宏さん。特にクルマが完全に暖まることなくちょっとだけ街中を走ってすぐにエンジンを止めてしまうような走り方をすると、どうしてもカーボンが溜まりやすいと説明してくれた。
エンジン内の吸気バルブや、インジェクター近辺(直噴エンジンの場合)にカーボンが溜まるとどうなるか? ガソリンが自動車メーカーの当初の設計どおりに燃焼しなくなるのだ。分かりやすく言い換えるとクルマの加速性能は低下し、排出ガスも汚くなってしまう。当然、燃費も悪くなる。だとすれば、エンジンルーム内に蓄積されたカーボンを取り除いてやればいい。
もともとは顧客ニーズを把握してガソリンの開発をしよう、というマーケット主導のガソリン開発がキッカケだったという。「自分のクルマを大切にしたい」「クルマを良好なコンディションで維持したい」という声に’02年から販売されている昭和シェルのハイオクガソリン、シェルピューラで応えたのだ。清浄剤が添加されているこのハイオクガソリンは、使い続けることでエンジン内のカーボンを除去する。結果としてクルマが当初の設計どおりの燃焼をさせることができるので、車本来の環境性能を回復するガソリンということになった。
研究所内の実験施設に潜入
ひと言に清浄剤を添加する、と言っても研究は一筋縄にはいかないもの。様々な清浄剤を試しカーボン除去の効用を確かめ、ハイオクガソリンとしての性能もしっかり確保されていなければならない。一例として取材時に見せてもらったのは、研究所内にある「全天候4WDシャシダイナモメーターシステム」と呼ばれる施設。
ローラーの上で実際にクルマを走らせることができるところだ。運転するのはロボットで、クラッチ操作までできるというからちょっと驚いた。ちなみにこの施設、摂氏マイナス40度からプラス40度、湿度30%から90%まで条件を設定でき、日照装置も完備。つまり、様々な天候状態のなかクルマの排出ガスを綿密に検証できる。もちろん、シェルピューラの開発にも用いられたが、そのほかの燃料を試す場所でもある。(後編に続く)