「ABT」と聞けば、クルマ好きが思い浮かべるのはアウディ、VW、シュコダなどをターゲットにしたドイツの自動車チューナー「ABTスポーツライン」でしょう。
現在、ABTスポーツラインは「ABT Group」という親会社に属していて、並列にDTMやフォーミュラeといったレースシーンでも活躍する「ABTモータースポーツ」、ABTの洋服などを手掛ける「ABTライフスタイル」、そしてEモビリティを手掛ける「ABT Eライン」という合計4つのビジネスで成り立っています。
日本未導入ゆえにチェックしていなかったのですが、ABT Eラインは架装メーカーとしてVW商用車部門に認可されていて、VWトランスポーターやキャディをベースに電気自動車を作っているそうです。実証実験用車両として相当数、ドイツの公官庁で採用されているとか。市販もされていて、一部のVW商用車ディーラーやABT特約店から購入できます。
ただ、ABT Eラインの現行EV(BEV)の航続距離はいずれも160㎞未満に過ぎません。
そこはABT自身も問題だと捉えているようで・・・、9月に開催されたドイツ・ハノファーで開催された「IAAトランスポテーション・ショー」にVWトランスポーターやキャディをベースにした燃料電池車を参考出品しました。
すると、市販化の要望が数多く届いたそうです。
気になる燃料電池がどこから調達されたものなのか、どのような性能を持っているのか、などは明らかにされていません。唯一、分かっているのは700気圧の水素タンクを2個~7個有する、ということだけです。
燃料電池を搭載した、ABTの商用車は温室効果ガス排出ゼロ、水素充填時間はディーゼル給油と同等、そして航続可能距離は800㎞程度を目指しているそうです。VWと距離が近いABTだからか、プレスリリースのBEVへの配慮が面白いです。
「モビリティの未来は、効率的な理由からバッテリー駆動が主流になるとしても、燃料電池はニッチな用途、特にバン部門で大きな可能性を秘めています。水素の典型的なエネルギー密度は、現在のバッテリー技術では到底実現できないものであり、航続距離が重要な意味を持つ場合には、まさに強みとなるでしょう」・・・、ですって。
燃料電池研究、VWが直接やるのではなく、近しいパートナー企業を“フロント”にして、やらせている・・・、とは考え過ぎでしょうか?