フィナンシャル・タイムズに面白い記事がありました。VW、ステランティス(旧フィアット・クライスラー&プジョー・シトロエン)、M・ベンツ、BMWなどが燃料電池車開発から遠ざかりつつある、というものです。
なかでもVWのヘルベルト・ディースCEOはインタビューで燃料電池車をフルスイングでディスってきたのです(笑)。
「自動車に水素を用いることはない」、「10年経とうとも水素を用いることは理にかなっていない(駆動用バッテリー+電気モーター+燃料電池という構成よりも、駆動用バッテリー+電気モーターでいいじゃないか、という趣旨)」などコメントを掲載。
充電ステーションの拡充を図るだけでなく、駐車場ではこのようなオンデマンド充電ロボットを配置すれば問題無し、というスタンスですもんね。
また、ステランティスのカルロス・タヴァレスCEOに至っては「水素を用いる車両(燃料電池車を示唆)を売り出そうとするメーカーはバッテリーとEV技術で遅れを取っている」とのコメントも紹介されていました。
一方、ルノーは小型商業車における燃料電池車のシェアを少なくとも30%まで引き上げられる、と同社のオルタナティブ燃料担当責任者、フィリップ・プレヴェルは試算しているそうです。後続距離300㎞以上、積載貨物量、バッテリー重量などを勘案すると、電気自動車よりも燃料電池車に軍配があがる、ともいうことも紹介。
それでもVWのディースCEOは商業車(VWはMANやスカニアも傘下に収めている)においても燃料電池を採用すると、1㎞あたりのコストは電気自動車に比べて3倍になる、と自論を展開したそうです。
いやはや、まるでプロレスのマイクパフォーマンスのような雰囲気になってきましたね・・・。
ちなみにフィナンシャル・タイムズこんな書かれ方していますが、ダイムラー・トラックはボルボ・グループと燃料電池車両開発をするジョイント・ベンチャーを発表したばかりです(笑)。
まっ、いずれにせよ石油ショック以降の排ガス規制よりも、大きなパラダイムシフトが自動車業界に訪れているのは事実です。そして、自動車メーカーによる熾烈な覇権争いからは目が離せません。
余談ですけど・・・、「Freedom Fuel」として水素&燃料電池がもてはやされたのは、究極的には『脱石油』がもたらす自律と平和、というフレコミからでした。太陽光をはじめとした再生エネルギーを用いて、自宅に設置した水素生成装置で水から水素を取り出して燃料にできればサイコー!って理想論から始まったと言っても過言ではありません。もちろん、今の技術ではコスト面の兼ね合いから、この理想には達していませんが・・・。
Freedom Fuelの根底にあった石油メジャー支配(直接的・間接的)からの脱却、石油を巡る戦争や紛争の撲滅、石油を入手しにくい国や地域(場所的・政治的理由)の自律というややヒッピー理想・・・、私は好きです。