安いのはいいことだが、やや難アリの気配も否めない
ダイハツで開発・生産され、トヨタにOEM供給される7シーターのコンパクトカー。ダイハツブランドではブーンルミナスとして販売されている。車名からも分かるように、同名のコンパクトカーをベースにロングホイールベース化し、3列目シートを付加したモデルである。ミニバン世代のニューファミリィカーとして、特に子育て期の女性ユーザーをターゲットに開発された。
エンジンは1500ccのみで、4ATを組み合わせている。3グレードともにFFもしくは生活4駆から選ぶというシンプルなラインナップ。パッソセッテの場合は、X、G、Sというグレード構成で、GおよびSにはやや簡易装備のCパッケージが設定されている。Sはスポーティなエアロパーツ仕様だ。FFモデルで約150から190万円という求め易い価格設定になっているのが最大の魅力と言っていい。
全長4.1mという扱い易いサイズながら、ホイールベースは2.75mと2.5lのミドルクラスセダン並。真横から見ると前に比べてリアドアが明らかに大きく、見るからに乗り降りしやすそう。想像通り、後席の足下空間にはコンパクトカーとは思えない余裕があって、大人5人がゆったりと乗れる。フロントはベンチシートタイプでヒップポイントが高く、乗りこみ易い。上級グレードには大型アームレストも備わっている。2列目、3列目シートのアレンジは、大きなレバーで簡単に行える。3列目のシートは本格的なものではないが、短い距離なら問題なく使えそう。
ダッシュボードにはシンプルデザインのセンターメーター方式を採用した。スイッチ類の数も最小限で、運転席前のアッパー&アンダーボックスや助手席アンダートレイ、格納式ドリンクホルダーに各ドアのポケット&ホルダーなど、収納スペースも多く使いやすい。フロントウィンドウは赤外線カットガラスで、そのほかはUVカットガラスもしくはUVカット機能付プライバシーガラスを採用した。GブックMx対応のHDDナビゲーションシステム、音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター、そしてDVD再生機能付7インチワイドディスプレイのリアエンターテイメントシステムなど、オプションも豊富に用意されている。
FFの「G」に試乗した。正直に言って、走りそのものの評価はそれほど高くない、というか低い。まず、女性ユーザーをメインとしたからだろう、170cmの男性が座るとまともなドライビングポジションが取れず、運転しているうちにだんだん猫背になってすぐに疲れてしまう。乗り心地も、タイヤの硬さが気になるもので、妙に突っ張った感じだ。それでも街中は何とか我慢できるが、80km/hを超える高速域での操縦性は明らかに不安定で心もとない。はっきり言って、遠出には全く不向きなクルマである。
筆者のような”運転好き”が積極的に乗って評価するような種類のクルマではない、と思う一方で、クルマなど便利な道具でしかないという多くのユーザーだってたまの高速走行でも安心して走りたいだろうし、走りのマジメな作り込みも何らかのカタチで乗り手に伝わるはずだとも思う。意図的に、それこそ環境問題を考えて、使用頻度を最小限に抑えるようなクルマを造る、というなら話は別だけれど・・・。
“安い”は確かに今の時代、世間受けする褒め言葉だ。7人も乗れて、燃費もそこそこ良くて、壊れなくて、サービスも保証もバッチリ。一応、文句ナシだ。割り切って乗ればいい、という意見も分かる。けれども、果たしてそれで日本車の未来があるのかどうか。こんなクルマからまず、(そう遠くない将来)中国など新興国のメーカーに”真似されてコスト勝負でやられる”気がしてならない。限られた予算の中で苦心のすえ実現したクルマであろうことは想像に難くない。その努力は認める。認めるけれども、出来上がったクルマに乗ってみると、この国のクルマの行く末について、いろいろと考えさせられてしまった。