「パサートCC登場!」と聞いて、多くの人は流行りのCC(クーぺ&カブリオレ)を思い浮かべたはず。
おお、ついにパサートまで採用したか、もう少し突っ込んで、ついに4ドアにもCCの時代か、なんて期待した人もいたかも知れない(事実、4ドアのCCコンセプトカーをヨーロッパのショーでは何度も見かけた)。
紛らわしいが、パサートのそれはコンフォートクーペの略だという。簡単に言ってしまえば、まるでクーペモデルのように背が低い4ドアサルーン。そう聞いてM・ベンツCLSクラスを思い出した人は偉い。正にそれのVW版。ジャガーXFあたりもそんな感じで、今後いろんなブランドからも登場しそうな新しいセダンのスタイルだ。もっとも、日本人にとっては新しくも何ともない。’80年代に一世を風靡したカリーナEDのコンセプトである。
パサートをベースに全長と全幅、トレッドを拡大しつつ、全高を50mmも下げた。結果的にセダンとは全く異なるサイズ感となった。室内に目を向ければ、CLSクラスと同様に、後席を真中でしっかりと区切った完全4シーターだ。それにしてもスタイリングはCLSによく似ている。サイズも、やや小さくなっている程度。VWエンブレムさえ隠してしまえば、CLSKだと言っても通用しそう。それどころか、最上級グレードの3.6リッター直噴V6+6速DSG+4モーション(4WD)モデルなら、本家本元のCLS350と比べて馬力で大幅に上回り、車重も100kgは軽いことから、動力性能では圧倒するはず。”CLSの350に乗るくらいなら、いっそ・・・”と考えてもおかしくない。
日本市場へは今年末にやってくる予定だ。まずはV6搭載のトップグレードと、200psの2.0TSI+6ATとなる。ミュンヘン近郊で開催された国際試乗会ではこのうちV6 4モーションと、日本導入予定のない140psTDIと160psTSIに乗ることができた。V6 4モーションは、フェートン未発売地域におけるVWのフラッグシップカーである。それゆえ、テクノロジー的にも見るべきものが多い。3.6リッター直噴V6+DSGはもとより、ダイナミックシャシーコントロールやアダプティヴクルーズコントロールといった日本導入予定の装備や、未定ながらレーンチェンジアシストやパークアシスト、クライメートシートなどなど、技術的なハイライトは多岐に渡っている。
エンジンをかけてまず気付くのが、メーター文字が見慣れたブルーバックライトではなく白の自光式に改められた点。独特なVW流の雰囲気が薄れた反面、圧倒的に見やすい。これは正にフェートンからの流れだという。併せて、ちょっとベントレーコンチネンタルGT風だったメーターパネルデザインも、大きな円形メーターの間に大きめのマルチファンクションディスプレイを置くという、ごくフツウのレイアウトとされた。ファンクション内文字も赤から白に変わっている。このあたり、視認性はいいがスペシャル感はかえって落ちたように思える。
走りはといえば、パサートの味付けをよりスポーティに、よりダイレクトに、よりダイナミックに進化させたもの。ディメンジョンとエンジン+パワートレインの変化分だけ、定評のあるパサートの走りに磨きがかかった。惜しむらくは、それゆえステアリングフィールやアクセルレスポンスがやや唐突で、ちょっとせわしない。エンジンも思ったほどパワフルさを感じず、フィールそのものも”快い”というレベルには達していなかった。もっとも、そうなったからといってVWらしいか、と問われると答に窮してしまうのだが。
個人的には、ディーゼルとガソリンの両4気筒モデルの印象が良かった。派手な先進装備をもたないグレードの方が、日本におけるニッチでツウなパサートの上級モデルらしくて好感がもてる。未試乗のハイパワー版4気筒モデルならば、そんな印象がさらに強くなることだろう。