無給油で東京~伊勢往復をこなす、ブルーテック
セダンのように曲がりくねった高速道路を快適かつ高速に走れて、荷物をたくさん(場合によってはミニバンより実質的に多く)利便よく積めるステーションワゴンは、古くから非常に欧州的な存在だった。だから、今でも格好いいワゴンが沢山あるし、一時のブームが去ってめっきりその数も減った日本でも、特にドイツプレミアムブランドのステーションワゴンは、一定の人気を保っているのだと思う。要するに、われわれ日本人は肌感覚で覚っているのだ。ステーションワゴンこそ欧州車スタイルである、と。
王道を行くのが、メルセデス・ベンツEクラスのステーションワゴンである。Cクラスや3シリーズのようにその下のクラス(欧州Dセグメント)も人気があるが、ラグジュアリィでハイスピード、ロングディスタンスをこなすGT的イメージで乗れるのは、やはり欧州Eセグメントのワゴンだ。Eクラスステーションワゴンはその頂点であり、5シリーズツーリングやA6アバントがそれに続く。
そんなEクラスステーションワゴンが現行世代へとモデルチェンジを果たした。基本的にはCクラスがワゴンを追加したときと同じ考え方、つまり、以前に比べると積載重視の、よりワゴンらしいクルマに仕立てることをコンセプトに作られているようだ。
そのことは、スタイリング、なかでもエンドピラーの形状を見ればすぐに分かる。ルーフから根元に向かって細くなっている、ということは、それだけルーフエンドを後に伸ばしたということ。ボディサイズ的にもひと回り大きくなって、全長に至っては4.9mに達したから、居住性と積載性の向上には目を見張るものがある。
Cクラスステーションワゴンもそうであったように、EASY-PACKという機能装備もあって、”荷物積み”には非常にありがたい一台となった。テールゲートは全車、オート開閉可能である。
もうひとつニュースがある。メルセデス・ベンツ日本は、Eワゴン発表を機に、ふたたびEクラスにディーゼルエンジン搭載車をラインナップすることになった。世界でもっともクリーンな排出ガス処理システム”ブルーテック”を採用したポスト新長期規制(もちろんEURO6も)に適合する最先端ディーゼルエンジン(3リッターV6ターボ)で、特にこのエンジンを積んだステーションワゴンアバンギャルドの投入は日本が世界で最初のマーケットになった。
クリーンディーゼルエコカー免税(取得税と重量税が100%免除)は、輸入車初であり、ディーゼルAT車ということでは日本初でもある。もちろん”補助金も”、だ。
E350ブルーテック ステーションワゴン アバンギャルドに試乗するということで、せっかくだから長距離を走ってみようと、友人を誘って伊勢まで向かってみることにした。旧型のE320CDIも非常に燃費に優れていて、満タンで東京関西往復をこなしたという経験があったから、今回もそこに期待して走り出す。乗車人数は3名だ。
ちなみに、現行Eクラスのガソリンタンク容量は80リッターである。
ルートは、東名から豊田までひた走り、そこから名古屋湾岸、東名阪を抜けて伊勢道へ、すべて高速。これほどディーゼル向きなドライブはあるまい。
道が空いていれば、燃費重視の一定速度クルーズでもチャレンジできたが、あいにくその日は週末で、朝早く出たにも関わらず交通量がハンパない。名古屋に近づくと次第に速度も低下し、東名阪では大渋滞にも巻き込まれた。
それでも、伊勢までの450km、時間にして6時間近くだったが、平均燃費は15km/l台後半を記録。だいたい30リッターの消費である。当然、燃料系も半分以上のこしていたから、かりに伊勢周辺を走り回っても、十分、帰りまで給油ナシでもつ計算だ。おまけに東京~伊勢の高速料金は1750円だった。高くなった軽油代を考えても、ひとり頭3000円で伊勢まで行った計算になる。浮いたお金で、伊勢牛をたらふく食ったことは言うまでもない。
肝心の乗り味はどうだったか。正直に言うと、街乗りや高速パーキングでの微速域におけるフィーリングは、あまりよくなかった。足回りの突っ張り感もさることながら、ディーゼルらしい音がけっこうする。実は運転席に座っている方が気になるもので、それは、ハンドルやペダルに触りつつそこからちょっとした振動を感じながらしかもノイズを聞いてしまうからだろう。結果的に、乗り心地感覚にも悪影響が出てしまう。これはちょっと残念だった。
けれども、速度にさえのってしまえば、全くといっていいほど問題はない。この力強さはV8級で、実際、最大トルクの値はE550と同じである。走りのスムースさも全く変わらない。そして、ステーションワゴンを感じさせないしっかり感もまた、特筆できる。
長距離移動のベストパートナー。新型E350ステーションワゴン+ブルーテックは、そういうクルマである。
(All About)