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デトロイトでコルベットZR1に乗った

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欧州スーパースポーツと真っ向勝負できる実力派

最高出力638psで、最高速は時速200マイル(320km/h)以上のコルベット。そう聞いただけで、途轍なくじゃじゃ馬で、途方も無く扱いづらく、この上なく野蛮な超マッスルカーを想像してしまう。伏線がある。一昨年、7lV8を積む505psのコルベットZ06に乗ったとき、加速のあまりの過激さ、力強さ、音、振動、に恐怖さえ感じた。あのZ06より130psも馬力があるんだって?! 最大トルクに至っては637Nmから819Nmへ。


唖然、というか、狂気の沙汰としか思えない。と同時に、Z06を自分のものにしたいという欲求があった私は、このニューカマーに一層惹かれてしまっていた。ライバルは、フェラーリ599にポルシェ911GT2、そしてランボルギーニLP640。ニュルブルクリンク旧コースで日産GT−Rのもつタイムを上回ったことは記憶に新しい。そんなZR1を試した処は、ミシガン州デトロイト郊外にあるGMのプルービンググランド。広大、という言葉では追いつかないほどの施設の中に、世界中のサーキットコーナーを再現したというトラックコースだ。
20インチのスピードスターホイール、プレクシ窓の空いたカーボン製エンジンフード、カーボンリップにカーボンステップ。ルーフもルーフボウもカーボンだ。リアには控えめながらスポイラーも見える。隣に並んだZO6が、ノーマル仕様に思えた。シャシーとボディの構造は、Z06と同じ。すなわちアルミニウムとマグネシウム、カーボンを使った軽量で強固な骨格。
1エンジン1マンで手組みされるスーパーチャージャー付6.2lV8LS9ユニットには、硬派にも新開発の6MTのみが組み合わされた。クラッチを踏み込んで、期待と不安のエンジンスタート!掛かった瞬間の迫力は、Z06より小さい? あれれ、どうして? サウンドは確かに迫力あるが、振動が少ない。エンジンマウントや重量増などが効いているのかも。
クラッチペダルは順当な重さ。軽くはないが、死ぬほど重いというほどではない。Z06のそれよりも、頼もしい感じがする。シフトストロークも短めで、操作フィールもいい。このあたりもZ06より上。洗練されているし、スポーティだ。動き出してすぐに分ったことだが、乗り心地がスーパーカークラス最良レベル。この時点でZ06との違いは明らか。とにかく、エンジンからの振動が7lに比べてかなり抑えられている。
はたと思い至った。スーパーチャージャーが効くまでは、これってノーマルと同じ単なる6.2lV8ってこと? それに手組みでピストンとか鍛造で精密度も高いからかえってスムースに回ってる? 試しにそのまま回転を上げずに走ってみると、まるでノーマルのように扱い易い。とてもオーバー600psには思えない。過去に乗ったどんな600psクラスよりも街乗りでフツウだ。これなら街乗りからロングドライブまで、何の気兼ねなく使えそう。80km/hで1500回転と、これまたノーマルと同じだから、回さなければ多分、燃費も変わらないはず。
GTカーとスポーツカー、ラグジュアリーとリアルスポーツ、その両方を高レベルで実現したかった、という開発エンジニアの言葉はまんざらではなかった。アップダウンのきついコーナーあり、すり鉢コーナーあり、平坦ゆえ難しい高速コーナーあり、と変化に富んだテストコースレイアウトに慣れたところで、638psを確かめてみる。
めちゃくちゃ速い! 3000回転あたりからエグゾーストのフラップが再び開き(イグニッションオンで一瞬開いている)、吐き出す排気ガスと奏でる音が背中と尻に伝わってくる。しかも、アクセルペダルをガンガン踏める!Z06のように怖くない。その分、スリルは少ない。手に汗握るという感じじゃない。欧州スポーツのように、踏んで踏んで回って踏める。ブレンボCCMブレーキの利きなどは超一流。Z06よりもソフトなスプリング、お得意のマグネットライドコントロール(Z06未採用)がみせる、適度にロールを伴う懐の深いコーナリングフィールが、シロウトには逆に安心。
マッスルコルベットを期待するなら、Z06に乗るべきだ。ZR1は、新しいコルベットであり、世界の超一流ブランドと高速道路でもサーキットでもタイマン張れるスポーツカーなのだった。

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