改めて乗って感じるオデッセイ独自の世界観
4世代目となるホンダの7人乗りミドルサイズミニバン。否、ミニバンというカテゴリーの中で語るのは、もはやふさわしくないクルマかも知れない。オデッセイは、従来のアッパーミドルクラスセダンに代わる、上級ファミリィカーという独自のカテゴリーを編み出した。新型は、3代目の正常進化モデルと言っていい。
低くワイドな見た目の印象はほとんど変わらないが、膨らんだリアフェンダーや厚みをましたサイドウィンドウグラフィックスなど、大きく違う点もいくつかある。並べて見比べると、実はけっこう違って見えるから不思議なものだ。搭載されるエンジンは、2.4lDOHCi−VTECのみ。ノーマルモデルはCVT(無段変速)を、4WD車には5ATを、それぞれ組み合わせる。
先代と同様に、スポーティ仕様のアブソリュートも用意。こちらには若干パワーアップされた2.4lエンジンが積みこまれ、ミッションもFF/4WDともにパドルシフト付き5ATのみとなる。アブソリュートにはフォグランプ付きエアロバンパーやエアロサイドステップ、18インチアルミホイールなどが装備されているから、見るからに勇ましい雰囲気だ。
乗り込むと、まずユニークなダッシュボードデザインに目を奪われる。二層のウィング状ボードが左右に向かって広げられ、ガバッとわしづかみに包まれるかのよう。攻めのデザインをみせるコクピット周りには、ホンダの最新トレンドを感じる。特にメーター周りのデザインが凝っていて、慣れないうちはややうるさく感じるかも。操作系はシフトノブ周辺に集中して置かれ、いずれも直感的に使えるよう配置が考えられている。実際の操作感も上々だった。
驚いたのが視界の良さである。Aピラーがかなり細くなって、周りが本当によく見える。特に三角窓からもちゃんと景色が見えるようになった。ピラーが細くなったことで、視線移動時にも風景が歪まない。だから、疲れない。視界の大事さを改めて思い知らされた。2列目シートはワンアクションでフォールダウンし、シートスライド量も320mmを確保しているから3列目へのウォークインもラク。また、ラゲッジスペースも旧型を上回る容量を確保した。特に、テールゲートの開口部形状が膨らんでことで、積載性も向上している。
最近のクルマは、セダンでも着座位置の高いクルマが多い。 “車高の低いミニバン”であるオデッセイは、だから乗り込むと乗用セダンと同じような感覚だ。Aピラーが前奥の方からこちらに向かって伸びている分、低く座っているような気分にさえなる。見晴らしのいいミニバン流コクピットが好きな人には物足りないだろう。とはいえ、実際の視界は良好で、それが街乗りを一層、たやすくしてくれる。それなりに大きなクルマであるにも関わらず、細い路地でもすいすい入っていけるのは、やはり視界がいいからだ。
タウンユースにおける静粛性の高さも特筆できる。最新のホンダ車らしく、重心を低く感じながら軽快な身のこなしをみせる。ドライバーの意思に自然に応答するハンドリングで、ひらりひらりとノーズが動く。スポーティと言ってもいい。この感覚ひとつをとっても、オデッセイがミニバンの範疇で語れないクルマであることが分かる。エンジンパワーも実用上は十分だ。
アブソリュートは硬い殻に包まれたような小気味のいい硬めの乗り味をみせるが、ノーマルならそれほどでもなく、多くの人が滑らかだと思う味付けになっている。オデッセイに乗っても、たまにはかっ飛ばしたい、という人にはアブソリュートを勧めるが、スポーティさにこだわらないならノーマルの方がいいと思う。エコドライブ機能(ECONモード)の付いたCVTで省燃費運転を試みて実燃費向上にチャレンジすることもまた、今風の楽しみ方だろう。