手頃なサイズ、実用的なハッチ、そして高性能。3拍子揃う
ギャランフォルティスそのものは、’07年半ばにデビューしたコンパクト/ミディアムサイズの4ドアサルーンだ。そもそも北米など海外マーケットでは”ランサー”として販売されており、ギャランフォルティスは日本市場専用名。ランサーエボリューションXのベース車もギャランフォルティスということになる。その5ドアバージョンとして’08年12月に加わったのがスポーツバック。日本市場ではなぜか不人気な5ドアハッチバックセダンだが、ヨーロッパ市場ではセダン感覚でスポーティなワゴン、もしくはセダン以上ワゴン以下のほどよい実用車として人気のカテゴリーである。
グレードは3種類。セダンとは異なるグレード展開で、ベースモデルから順にツーリング/スポーツ/ラリーアートとなる。ツーリングとスポーツにはCVTが組み合わされ、FFと4WDを用意。セダンに用意されていた5MT仕様の設定はない。ランエボに近いイメージをもつ最強グレードのラリーアートは、セダンと同様に2lMIVECシングルスクロールインタークーラー付きターボ+ツインクラッチSST+4WDという仕様だ。ちなみに、スポーツバックの顔付きは全てセダンのラリーアートと同じ。大きなグリルが特徴である。
フォルティス系に用意されたラリーアートというグレードは、ランエボまでのハイパフォーマンスは要らないけれども、昔で言う所の”VR−4″レベルの高性能は欲しい、というユーザーにぴったりなチョイスだ。エンジンパワーこそ240psとランエボの300psオーバーに比べると控えめ(それでも昔のVR−4と同等レベルだ)ながら、2ペダル6速ツインクラッチシステムSSTや前後LSD、ACD(アクティブセンターデファレンシャル)、ダクト入りアルミボンネットフードなど走りに関わる機能装備は充実している。
もちろん、5ドアハッチバックとしての機能性の高さにも注目しておきたい。後席は6:4分割可倒式で、背もたれを倒せば大きな荷物の収納も可能。ノーマル時でも十分な積載容量を確保し、2段目のラゲッジフロアを使えば345lを確保する(ツーリング/スポーツ)。ラリーアートのシートは専用スウェード調クロスでロゴが入る。HDDナビゲーションシステムやロックフォズゲートスピーカーシステムなどは全グレードにオプション設定されている。
ラリーアートに試乗した。ギャラン伝統の逆スラントしたノーズとボリュウムのあるリアセクションの取り合わせが独特の存在感をあたりに放っている。サルーンモデルよりむしろまとまりがいいように思う。ランエボゆずりの迫力ある顔立ちも、三菱の高性能車をアピールするにふさわしい。乗り込めば、ランエボやギャランフォルティスでお馴染みの光景が広がっていた。セダンと異なり、インテリアの色調はブラック系のみ。T字形で左右に張りのあるダッシュボードとスポーティな演出のメーターナセルが特徴だ。
エンジンをかけてもランエボのようにがつがつとした感じを受けない。振動、ノイズともに抑えられ、高性能グレードであることをひけらかさないのだ。オトナのGTカーといった第一印象である。SSTのシームレスな加速フィールは、相変わらず秀逸。心地よい節度のパドルシフトと相まって、今もっとも新しいミッションの1つとして納得のレベルに達している。ランエボ慣れした体にはひょっとして物足りないかもと思われたパワーフィールも上々。中間加速にはターボ独特ののけぞるような力強さもあって、フツウはこれで十分以上といったパフォーマンスだ。
もちろん、乗り心地も悪くない。ランエボ同様に身のぎっしり詰まった凝縮感を味わいながら、小気味のいいライドフィールをみせる。