カラフルなロールスロイス・ファントム(旧型)が販売されていることに、心が躍りました。パステルイエローのツートーンカラーに、メタリックパープルのツートーンカラーですよ。面白いことに最初は“ギョっ”として、眺めれば眺めるほど・・・、見慣れてきませんか? 現在、オランダのautoleitnerという中古車販売店に在庫されています。価格は「応談」です。
まずパステルイエローは2008年式「ファントム・パール・ビスポーク・コレクション」です。“ビスポーク・コレクションだからパステルイエローのツートーンカラーは、ロールスロイス純正かぁ”なーんて思っていました。なお、ファントム・パールとは中東向けに販売されたもので、ウッドパネルの細工に文字通り「パール(真珠)」があしらわれているもの。
ちょっと検索してみるとこのクルマ、老舗オークションハウス「ボナムズ」がオンラインで開催する「The Market」にて今年の7月28日に8万6500ユーロで落札されたものでした。詳しい履歴は不明、海外から一時輸入許可でオランダに搬入・・・、と何やらやんごとないことが車両解説に書かれています。
ただ、詳細写真を見て見ると、納車書類から新車販売はクウェートだったことがわかります。14年落ちなのに、走行距離はたったの206㎞。車両写真を見ると、納得です。そして、車両解説を読み進めていくと、ずっこけました。なんとこの車両、エクステリアカラーは「ブラック」だったのです。
新車で購入した元オーナーは、速攻でボディカラーを塗り替え、どこぞで保管もしくは展示していたのですねぇ。ドアヒンジ、ピラー、エンジンルーム、トランクリッド、どの部分を見ても“色替え”車両だなんてわかりません。塗装屋さん、見事な仕事ぶりを発揮していらっしゃいます。
そして、メタリックパープルは2005年式「ファントムGCCリミテッド・エディション」です。GCCリミテッド・エディションとはなんぞや・・・、って思いますよね?「Gulf Co-operation Council」の頭文字を取ったもので「湾岸協力理事会」を意味します。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート6カ国によって設立され、防衛・経済をはじめとするあらゆる分野における参加国間での調整、統合、連携を目的としています。
車両写真を眺めていたら「GCC Summit Limited Edition One of Seven」とあるので、サミット開催時の移動車両として用いられたのでしょうね。そして、6カ国なのに7台作られたのは・・・、恐らくスペアカーとして1台用意されたのだと推察します。純銀製の「スピリット・オブ・エクスタシー」、冷蔵庫内蔵型リアセンターコンソール、カシミアレザーなどが特別装備でした。こちらも・・・、エクステリアカラーは「ブラック」でした。
走行距離は854㎞でもちろん、内装はビカビカです。こちらの車両も販売書類はクウェートで、パステルイエローと同じ会社でした。そして、パステルイエロー同様、The Marketに出品され10万ポンドで落札されたものでした。両車、ほとんど動かされていない、という機械面でのリスクは伴いますが、ほぼ新車の状態である、という点だけで言えば割安で落札されたように感じます。
ここからは完全なる憶測ですが、この2台、同じオーナーが所有していたものではないでしょうか?しかも、ほとんど走っていないことを鑑みて、自分なりの“アート”として車両を塗り替えたような気がしてなりません。もしかしたら、別な色で似たような“ツートーン”仕上げが存在するかもしれません。
もはや、アートですよ!
有名どころの絵描きさんの作品なんて1点ン億なんてザラなのに、ファントムなら安い、って思ったのかもしれません(笑)。富裕層が飽くなき差別化への欲求は負けん気、承認欲求、そして個性・・・、実に奥深い世界です。