静かで覇気がなく、味もそっけもないところなどもLS譲り
日本におけるレクサスブランド待望のSUV。プレミアムブランドへの言わば登竜門的な存在だ。レクサスRXといえば、以前は日本名ハリアーの対外レクサスブランド用モデルだった。もちろん、海外ではその後継モデルという位置づけだが、トヨタ/レクサスとしてはハリアー後継ではなく全く新しいコンセプトで開発したクロスオーバーSUVであるとした上で、ハリアーの販売を国内では継続(ハイブリッドと2.4l)し、レクサスRXの独自性をアピールしたいようだ。
モデルラインナップはRX450hとRX350という大排気量モデルのみ。前者は3.5lアトキンソンサイクルエンジンにリダクションギア付ハイブリッドシステム、そしてE−FOURを組み合わせたモデルで、4.5lV8モデル級のパワーとクラス最高の燃費性能を実現したとされる。後者には3.5lV6、6AT、アクティブトルクコントロール4WDを搭載。それぞれのグレードに、よりスポーティで欧州仕様のシャシーと19インチタイヤを採用した「バージョンS」、セミアリニン革シートを装備する豪華な「バージョンL」、そして「バージョンLのエアサスペンション仕様」が用意される。また、350にはFFモデルの設定もある。
“ハリアーの後継車ではない”と関係者が言う通り、外観の雰囲気にそれらしさは微塵もない。わずかに、クーペ風のサイドウィンドウとリアクセションのまとめ方がハリアー(前RX)っぽいが、このように思い切った手法は初代ハリアー以降のクロスオーバー車に共通するものだ。特にフロントマスクは、LSなどと共通の最新レクサスモードである。SUVモデルにありがちな”いかつさ”を抑え、車幅もそれほど広げずに、クリーンな佇まいとした。
インテリアの方がはるかに挑戦的である。メーターナセルは助手席側に向けて楕円形に出っ張り、上部にメーター系を、下部にスイッチ系を集中させた。シフトレバーがその下から生えている。デザインだけではない。シフトレバーを上方に追いやってまで使いたかったのが、リモートタッチシステムだ。これは、センターコンソールに手を置いたままで、画面上のポインターを遠隔操作するというもの。SUVではナビ用画面を見やすいところに置くと便利な画面タッチが使えないという問題が指摘されてきたが、このリモートシステムはそれを打破するもので、今後、SUVやミニバン、スポーツカーなどにも使用されそうだ。
まずは注目のリモートスイッチの使用感から。遠くの小さいポインターが人によってどれだけ見やすいかどうかという疑問は残るが、使用感そのものは上々だ。特にポインターがスイッチ類の上に来たときの”段差”感がいい。ポインターの移動速度などを変えることもできる。
試乗車はRX350のバージョンS。まずハッキリ言えるのは、ハリアーとは相当に違う乗り物であるということ。例えて言うならば、ハリアーがマークXだとすれば、新型RXはちゃんとGSになっている(クラスは違うけれど)。静かで覇気がなく、味もそっけもないところなどもLS譲り。いい意味でクルマの運転に無関心でいられるから疲れないかも。そこがレクサスらしさ、だと言われれば、クルマ運転好きに反論の余地はない。
19インチを履くバージョンSでは、若干下回りにバタツキを感じたが、街乗りから高速まで、総じて引き締まった走りをみせる。ワインディングにおける走りも、これまでのトヨタのSUVレベルからすれば雲泥の差。もっとも、そういう場面が似つかわしいモデルではないが。最後に、別の機会に試したバージョンLエアサスペンション付きの方が全体的に重厚な乗り味で、実にレクサスらしく、ハリアーを完全に忘れさせるモデルだったことを報告しておく。