走りが楽しめる、という点ではライバルたちを寄せ付けない
「BMWらしさ」とは簡単に言うと、普段遣いでも乗ってわくわくできること、だといえるが、それをベーシックにかつストレートに表現しているのが3シリーズというクルマである。3シリーズとして5世代目にあたる現行モデルは、’05年にデビューした。歴代モデルの例に漏れず世界的に評価も高く、日本市場でも絶大な人気を誇っているが、ライバルたちがひと通り新世代へとフルモデルチェンジしたことを受けて商品性をさらに磨くべく、’08年秋に初めてのマイナーチェンジが施された。
一見、それほど大きな変化はないように見えるが、新旧を並べてつぶさに比較すれば明らかに違っている。なかなか巧いやり方。特にフロントマスクは彫刻的になり、よりシャープになった印象だ。特徴的なキドニーグリルもぐっとワイドに。リアランプは伝統回帰でL字型に。ヘッドランプ内インジケーターと後ライトには流行のLEDを使っている。エンジンやドライブトレインなど、メカニズム的に大きな変更点はない。走行性能をブラッシュアップするため、トレッドが20mm拡大されたことが目立つ程度だ。
現時点のラインナップは3l直噴ツインターボの335を筆頭に、直6の325、直4の320という構成で、325には4WD仕様(xDrive)の設定もある。すべて6速ATを組み合わせているのも以前と同じ。ただし、従来存在した低出力仕様2.5lの323がラインナップから落とされた。
インテリアに目を向ければ、基本デザインに大きな変更点はない。ただし、従来に比べて4倍の解像度を誇る8.8インチのワイドモニターを搭載したり、日本仕様のiドライブボタン(NAVをMAPに)を設定したり、さらには最新(日本未発売)の7シリーズと同様のブックマークボタン+交通情報ボタンを装備するなど、機能を細やかにレベルアップ。人気モデルゆえ、ユーザーからの要望がよくメーカーに届けられていると言えそうだ。
CクラスやA4といったライバルたちが”劇的”に進化した走りをみせた今、気になるのはこのたびのマイチェンで3シリーズの走りがどう変わったか、ということ。結論から言うと大きな変化はなく、3シリーズの長所に磨きが掛かった。運転席に近づいて窓越しに見える景色がドライバーオリエンテッドだ。運転するぞ、という気にさせる。シートに腰を落ち着け、太めのハンドルを握ってエンジンをかけると、勢いのいいエグゾースト音。さらに気持ちが昂ぶる。
トレッドが広くなったこと、そしてランフラットタイヤの性能向上もあってか、安定感が増した印象だ。特に325の仕上がりがいい。アクティブステアリングの印象も以前に比べると雲泥の差。かなり自然なフィールになった。
手ごたえよくきびきびとしたハンドリングは3シリーズならでは。ちょっとしたコーナーを曲がっていく瞬間に「ああ気持ちいい」と思わせるのがすごい。加えて6気筒エンジンも相変わらず素晴らしい。ハンドリングとエンジンフィールはBMW独特である。4気筒の320はやや古さが目立った。というのも、やけに重いパワーステアリングが”健在”だったからだ。4気筒にはアクティブステアリングが装備できないため、アクティブ付きの6気筒モデルとはまるで違う乗り味になっている。
走りが楽しめる、という点ではライバルたちを寄せ付けないが。335のパフォーマンスは相変わらず過剰なくらいに高い。トルクが気持ちよくのりつつも、ターボを感じさせないところがBMWらしい。以前ならM3と言っていいほどの高性能、フツウは必要ないだろうが、3シリーズを極めたい人はどうぞ。