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Editor's Voice

俺たちのミッレミリアPART3

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スペイン行きはイベリア航空だ。マドリッドまでは聞いたことのないキャリアとの共同運行便だったと思う。人影もまばらなカウンターに並び、荷物を預けてチェックインを済ませ、身軽になった。この瞬間はいつも、勘違いだが晴れ晴れしい。
空港を使うということは、とかく面倒ごとのたまり場ではある。とはいえ、ここはこの先セビリャまでの様々な煩わしさと着いたときに感じるであろう疲労と安堵をひととき忘れ、我々は半ば意気揚々と、搭乗口に向かった。
ビジネスクラスラウンジを探して、外よりもはるかに人影もまばらな空港内を歩く。ある程度の都市にあれば、閑散という言葉がおよそ似つかわしくない場所が空港というものだ。様子が少し、おかしい。
スペインへの木曜夜便とはいえ、かりにも一国の首都へと向かう便なのだから、もう少し人がいても良さそうである。それぐらいの違和感が、胃の奥に残ったままの揚げ物最後の一カケのように、小さいがくっきりと生じ始めていた。
ようやく探し当てたラウンジで、最初の本格的なトラブルに遭遇する。マルセイユに出張で来ていたらしいスペイン人ビジネスマンが、まるで英語倣いたての日本人のようにはっきり音を出すフランス語で、インターフォンに向かってまくしたてていた。
途中から彼の言語が英語に切り替わると、ようやく事情が飲み込めた。要するに、ラウンジに入るには暗所番号がいるらしく、彼は持っていなかった。我々もそうだったが、カウンターでそんなものは渡されなかったし、教えてもくれなかった。彼はそう説明しているのだが、一向にラチがあかない。
途中、半ば諦めた彼は、われわれに経緯を説明してくれる。共同戦線を張ろうというわけだ。
「また二人きたぞ。今度は日本人だ。番号なんかもらってないって言っている。俺は世界中を旅しているが、こんなひどいエアラインは他にないぞ。それに、イベリアには知り合いの重役がいる。すぐに電話して文句言ってやるから、名を名乗れ!」
お決まりの脅し文句だが、これが効いた。電磁ロックがジーと解除されると、3人に増えたわれわれ一行は、無事、小さな小さなラウンジに入ることができた。
スペイン人のビジネスマンは、それでもまだぶつくさと文句をつぶやきつつ、新聞を読み始めた。私はといえば、そんな彼の愚痴に最初のうちこそ相づちを打っていたが、入ったらこっちのもんだとばかりに、そのうち無視を決め込んだ。
そして、おもむろに単行本を取り出して、お腹をなぐさめようと、ラウンジお決まりのご当地ポテトチップスを一袋掴み、いつもはビールなのになぜだか不思議とオレンジジュースを冷蔵庫から取り出して、ふかふかだが真っ赤なソファーに座り込んだのだった。

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